前回の記事では、AIが「答えられなかった質問」に注目することで、ホームページに不足している情報を見つけられる、という話をしました。
お客様は知りたい。
でも、ホームページには書いていない。
AIが答えられなかった質問を調べることで、そんな情報の抜けを見つけることができます。
ところが、実際にホームページの情報をAIに読ませてみると、もう一つ別の問題が見えてきます。
情報は、ちゃんと書いてある。
それなのに、うまく答えられない。
なぜでしょうか。
「ちゃんと書いてあります」
例えば、キャンプ場のホームページにAIチャットを設置したとします。
利用者から、
「犬と一緒にキャンプできますか?」
と質問がありました。
ホームページには、
「ペット同伴可」
と書いてあります。
ですから、
「はい、ペットと一緒に利用できます」
と答えることはできそうです。
ところが、もう少し詳しくホームページを見ていくと、
施設紹介ページには、
「ペット同伴可」
利用規約には、
「ペット同伴で利用できるのは指定されたサイトのみ」
FAQには、
「場内では必ずリードを着用してください」
と書かれていたとします。
情報はあります。
しかも、どれも間違っているわけではありません。
問題は、
情報がバラバラに存在していることです。
人間なら「なんとなく」読める
人間がホームページを見る場合は、それでも理解できることがあります。
施設紹介を読む。
「ペットOKなんだ」
FAQを見る。
「リードが必要なのね」
予約するときに利用規約を見る。
「利用できるサイトは決まっているのか」
複数のページを読みながら、頭の中で情報をつなぎ合わせます。
しかし、本当にこれで「分かりやすいホームページ」と言えるでしょうか。
初めて利用する人が、すべてのページを読んでくれるとは限りません。
「ペット同伴可」だけを見て予約し、後になって、
「このサイトではペットと泊まれないんですか?」
となる可能性もあります。
つまり、
「ホームページに書いてある」ことと、「利用者に伝わっている」ことは同じではありません。
AIに読ませると、情報の「散らかり」が見えてくる
AIにホームページを読ませて質問してみると、こうした問題が見えやすくなります。
同じことについて、複数のページに違う表現で書かれている。
重要な条件だけが別ページに書かれている。
FAQと利用規約で表現が違う。
古いお知らせに以前のルールが残っている。
サービスの名称がページによって違う。
人間が読めば「たぶんこういう意味だろう」と補える場合でも、情報として見ると整理されていないことがあります。
AIに質問してみることで、
「情報はある。でも、情報の置き方が分かりにくい」
という問題が見えてきます。
情報が矛盾していたら、どちらを信じる?
さらに困るのが、情報の不一致です。
例えば、
施設案内には、
「チェックイン 13:00〜」
と書いてある。
FAQには、
「チェックイン 14:00〜」
と書いてある。
どちらが正しいのでしょうか。
人間なら、
「どちらかが古いのかな?」
と思うでしょう。
AIも同じように迷います。
もちろん、AIがどちらかを選んで回答することはできます。
しかし、それでは困ります。
本来の問題はAIではなく、
ホームページの中に異なる情報が存在していること
だからです。
AIの回答を修正するより、元になっているホームページを修正した方がよいでしょう。
古い情報も意外と残っている
ホームページを長く運用していると、情報は少しずつ増えていきます。
サービスページ。
FAQ。
ブログ。
過去のお知らせ。
キャンペーン。
PDF。
そのときは正しかった情報でも、数年後には変わっていることがあります。
料金が変わった。
営業時間が変わった。
ルールが変わった。
サービス名が変わった。
新しいページは修正した。
しかし、3年前のお知らせには古い情報が残っている。
人間なら掲載日を見て、
「これは古い記事だから」
と判断できるかもしれません。
しかし、ホームページ全体を「企業が公開している情報」として見ると、
新しい情報と古い情報が同時に存在している
状態です。
AIに情報を利用させるようになると、こうした情報管理の問題も無視できなくなります。
AIのためにホームページを直す?
ここまで読むと、
「では、AIが読みやすいようにホームページを作り直さなければならないのか」
と思うかもしれません。
私は、少し違うと考えています。
例えば、
重要な条件を一か所にまとめる。
同じものは同じ名称で表現する。
例外条件を明確にする。
古い情報を整理する。
FAQを充実させる。
料金や営業時間を分かりやすくする。
これらはAIのためだけに必要なことでしょうか。
違います。
人間にとっても、その方が分かりやすい。
AIに読ませたことで、これまで気づかなかったホームページの分かりにくさが見えてきただけです。
「情報量」より「情報設計」
ホームページを充実させようとすると、情報を増やすことを考えがちです。
新しいページを作る。
FAQを増やす。
ブログを書く。
詳しい説明を追加する。
もちろん、それも必要です。
しかし、情報が増えれば増えるほど、
どこに何を書くのか。
同じ情報をどう管理するのか。
何を最新情報とするのか。
どのページを見れば正しい情報が分かるのか。
といった「情報設計」が重要になります。
単に情報が多ければよいわけではありません。
必要な情報が、必要な形で整理されていること。
AIにホームページを利用させるようになると、その重要性がより分かりやすくなります。
AIをホームページの「点検役」にする
前回は、AIチャットを「お客様が何を知りたいのかを知るセンサー」として使えるのではないか、という話をしました。
もう一つ、
ホームページの情報を点検する仕組み
として考えることもできます。
いろいろな質問をしてみる。
回答できなければ、情報が不足していないか確認する。
回答が曖昧なら、情報が分散していないか確認する。
回答がおかしければ、古い情報や矛盾した情報がないか確認する。
そして、元のホームページを改善する。
AIの回答だけを直すのではありません。
AIが参照している情報そのものを良くしていく。
この考え方が重要だと思います。
「書いてある」から「伝わる」へ
これまでホームページを作る側は、
「その情報ならホームページに書いてあります」
と言うことがありました。
確かに書いてある。
でも、見つからない。
意味が分からない。
条件が別の場所にある。
どれが最新なのか分からない。
それでは、利用者にとって「伝わっている」とは言えません。
AIにホームページを読ませてみると、この違いが意外とはっきり見えてきます。
大切なのは、
「書いてあるか」ではなく、「必要な人に正しく伝わる状態になっているか」。
AI時代のホームページでは、情報量を増やすだけでなく、企業が持つ情報そのものを整理していくことが、これまで以上に重要になるのかもしれません。
そして、ここからもう一つ疑問が生まれます。
これまでホームページは、基本的に「人に読んでもらう」ことを前提に作られてきました。
しかし今後、ホームページの情報を読むのは、人間だけなのでしょうか。
次回は、
「AI時代、ホームページは誰のために書くのか?」
について考えてみたいと思います。
