デジタル化したのに、なぜ面倒になるのか

先日、ドローンの国家資格である「二等無人航空機操縦士」の限定変更講習を受講しました。

今回の解除対象は「昼間飛行」の限定です。

講習を受け、修了審査にも無事合格。

これであとはオンラインで限定変更の手続きをすれば終わり。

そう思っていました。

ところが、実際に手続きを始めてみると、なかなか終わりません。

DIPSで申請しようとしたら、選択肢が出てこない

講習修了後、「無人航空機講習修了証明書」が発行されました。

そこで国土交通省の「DIPS2.0」にログインし、「技能証明書の限定変更」へ進みます。

ところが、途中にある、

「技能証明合格証明書番号」

のリストボックスに、何も表示されません。えっ?って思いました。

証明書は持っている。

講習にも合格している。

なぜ選べないのか。。。

マニュアルを確認し、講習機関から届いていた案内を改めて読み直してもすぐにわかりません。

イライラしながら試行錯誤してようやく判明。

私が持っていたのは、登録講習機関が発行する「講習修了証明書」。

DIPSが求めているのは、それとは別の「技能証明合格証明書」だったのです。

ちゃんと全部読め。と言われそうなところですね。読んでるんですけどね。

次は別のシステムへ

「技能証明合格証明書」を取得するためには、DIPSではなく、日本海事協会(ClassNK)の「無人航空機操縦士試験申込システム」で手続きをする必要があります。

つまり、

登録講習機関で講習・修了審査
↓
講習修了証明書を取得
↓
ClassNKで試験合格証明書の発行を申し込む
↓
技能証明合格証明書が発行される
↓
DIPS2.0に戻る
↓
技能証明の限定変更を申請する

という流れです。(ここでは健康診断は省略しています)

しかも、すでに技能証明を持っている私の場合、ClassNKでは通常の「試験合格証明書発行申込み」ではなく、「試験合格証明書発行申込み<2回目>」から手続きを行いました。

さらに申請画面を進めていくと、下のほうに、「管理者側のフォームです」

という、利用者としてはどう扱えばよいのか迷う表示まで出てきます。

最終的には申込みが完了しましたが、結果が確認できるようになるまでには、申込みから7営業日程度かかるとのこと。

その後、再びDIPS2.0に戻って限定変更申請を行います。

正直、「長い……」なあという感想です。

それぞれのシステムはデジタル化されている

ここで少し考えてみました。

今回利用した仕組みは、どれもデジタル化されています。

紙の申請書を持って役所の窓口を回ったわけではありません。

講習の情報も電子化されている。

ClassNKへの申込みもWebです。

国土交通省への申請もWebシステム(DIPS2.0)です。

つまり、

それぞれはデジタル化されている。

それなのに、利用者としてはあまり便利になった感じがしない。むしろ意味不明な流れ。

なぜでしょうか。

「部分最適」と「全体最適」の違い

理由の一つは、それぞれの業務が別々にデジタル化されていることにあるように思います。

今回の制度には、

  • 登録講習機関
  • 指定試験機関
  • 国土交通省

という、それぞれ異なる役割があります。

講習を行う組織、国家資格として合格を確認する組織、技能証明を交付する行政機関。

責任を分けること自体には意味があります。

しかし、

組織が分かれていることと、利用者の手続きまで分断されていることは別問題です。

利用者からすると、やりたいことは非常にシンプルです。

「昼間飛行の限定を解除したい」

ただそれだけです。

ところがシステムを利用すると、

「ここまでは講習機関」

「ここからは指定試験機関」

「最後はDIPS」

という制度側の事情を理解しながら、自分でシステム間を移動しなければなりません。

これは行政システムだけの問題ではありません。

企業のDXでも、よく似たことが起きています。

社内DXでも同じことが起きる

例えば、

営業部には営業管理システム。

経理部には会計システム。

総務部にはワークフローシステム。

それぞれを導入したとします。

営業部では業務が効率化された。

経理部でもペーパーレスになった。

総務部でも電子承認ができるようになった。

一見すると、DXが進んでいるように見えます。

しかし実際の利用者が、

営業システムに入力
↓
PDFを出力
↓
経理システムに添付
↓
受付番号をコピー
↓
ワークフローシステムにもう一度入力

という作業をしていたらどうでしょう。

全部デジタルなのに、全体としてはあまり便利ではありません

これは「デジタル化」と「DX」の違いを考えるうえで、非常に分かりやすい例だと思います。

組織図ではなく「利用者の目的」から考える

システムを作る側は、どうしても組織単位、業務単位で考えます。

営業部のシステム。

経理部のシステム。

総務部のシステム。

しかし利用者は、組織図に沿って仕事をしているわけではありません。

利用者には、

「見積書を作りたい」

「商品を発注したい」

「休暇を申請したい」

といった「目的」があります。

今回のドローンの手続きも同じです。

利用者(私)の目的は、

「昼間飛行の限定を解除したい」

です。

その裏側で、

講習機関 → 指定試験機関 → 国土交通省

と処理が流れること自体は問題ありません。

利用者から見れば一つの入口で申請し、その裏側で必要なデータが連携される。

そんな仕組みであれば、制度上の責任分担を維持しながら、利用者の負担を大きく減らせるはずです。

DXで見るべきなのは「一連の体験」

今回の手続きを経験して、改めて感じたことがあります。

DXを考えるとき、

「システムを導入したか」

だけを見てはいけないということです。

そのシステムを使う人が、

目的を達成するまでに何をしなければならないのか。

ここまで見なければ、本当に業務が変わったかどうかは分かりません。

紙だった申請書をWebフォームにする。

ハンコを電子承認にする。

ExcelをWebシステムにする。

もちろん、それだけでも一定の効果はあります。

しかし、それぞれを個別にデジタル化した結果、利用者が複数のシステムを行ったり来たりしているのであれば、それはまだ途中なのだと思います。

DXで見るべきなのは、一つひとつのシステムではなく、利用者が目的を達成するまでの「一連の体験」です。

今回のドローン資格の手続きは、そのことを身をもって考える機会になりました。

システムを作るとき、業務改善をするとき、

「この部署の仕事をどうデジタル化するか」

だけではなく、

「利用者は、最初から最後までどう動くのか」

を一度通して見てみる。

それだけでも、見えてくる課題はかなり変わるのではないでしょうか。